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「仮初」 no.2【痣】

刀剣乱舞・二次創作SS「仮初」
no.2【痣】

●方向性:刀剣男子同士・審神者×刀剣男子
●物語:夢要素有、ややダーク、シリアス
●登場人物:堀川国広,不動行光,審神者


ある日、僕は全てを知りたくなった。


君が顕現する少し前に僕はここにやってきた。

透明な綺麗な光が、僕の体を包み込んで満たしていく。
体にしみ込んだ血の匂いや苦しさの一切合切が奪われる感覚。
今でもその時のことはよく覚えている、それはとても言葉にしがたい、
心地よくて幸せな時間だった。

天国に行くときって…こんなに暖かくて優しいものなんだ。
疑いもしなかった。僕もきっと土方さんや兼さんと一緒に
天国に行けるんだって思っていたから。


それなのに。


「……」

「おはよう…」


目を覚ました僕を見下ろす貴方は酷く悲しそうな顔をしていた。
初めて見るはずの貴方の顔は、不思議と親しみを感じる懐かしさを覚える。
そうだ…そのどこか悲しそうな目は、あの人に少し似ていたんだと思う。


「貴方は…誰?」


貴方は僕のその問いに答えるわけでもなく、
ただ僕の頬を撫でてから触れるだけの口づけをした。


僕は、天国には行けなかった。
またあの人を置いてきてしまったらしい。


***


「えっと…堀川さんって呼べばいいですか?」
「うん、好きなように呼んでくれていいよ。僕も不動くんでいい?」
「え…ああ…はい」
「うん、じゃあそれで!」


気付けば、部隊の中に君の存在がいた。

主さんに、「面倒を見てあげて」なんて言われて僕も満更でもない感じだったけど、
思えば君のことをいつの間にか気にかけるようになっていたんだと思う。

「出発前にはちゃんとお酒を抜かないと」

君はどんな時でも、甘酒を手離さない。
部隊長の太郎さんもまるで次郎さんが二人になったみたいだと
あきれ顔の様子だし、一応仮にも教育係になった僕が止めに入らないと
いけないのかな…なんて思ってみて、出発前には毎回同じ事を言ってみる。

「不動くんてば、もうお酒はその辺にして」
「うー…大丈夫ですって…酒飲んでてもちゃーんと俺、戦えますって…」

ろくに目も開いていないのによくそんなことを、と返すと
君は機嫌よく笑いながら、さっきと全く同じ言葉を復唱する。


その頃の僕は、君が酒を手放さない理由を知らなかったんだ。


***


「え?」
「俺、修行に出る事にしました。主にも話つけてきたんで…明日出発します」


突然、君が僕にそれを告げた時の事は今でもよく覚えている。
この本丸から修行に出たことがあるのは現状だと僕だけで、
君が修行に出れば晴れて、二人目の修行になるわけだけど、
正直なところ、主さんが君の修行を認めた理由がその時はわからなかった。
確かに君は部隊での働きも認められていたし、初めの頃から比べたら
本当に強くなったとは思う。けれど、他の短刀を差し置いて
一番遅く本丸に来た君がまず修行に選ばれることが不思議な気がしていたんだ。

「そう、少し会えなくなるの寂しいな。頑張ってきてね」

でも僕は、全てを押し込んでただ一言だけ、そうつぶやいた。
一番側でずっと君を見守ってきたからこそ、君が強くなりたいと
願う事は誰よりも応援したいと思ったし、僕も本音では凄く嬉しかった。
今まで以上に強くなった君とまた一緒に戦えることを想像すれば
酷く気持ちが高揚することにも何となく気付いていたのかもしれない。

「ありがとうございます、俺、絶対強くなって帰ってきます!」

君はそういうと、大事に持っていた甘酒の瓶を床に置いて僕の手を握りしめる。
咄嗟に微笑み返して、僕も君の手を握り返したけど、本当はその真っすぐに
向けられる眼差しに眩暈を起こしそうになっていた。


***


ある日、僕は全てを知りたくなった。

君の中で何が起きていたのかを。

でも、それを僕が知れば、君を傷つけることになるから、
表立っては出来ない事であることも分かっていた。

だから、君に見つからないように
僕は君の事を知ろうとしたんだ。



***



主、もう大丈夫だから…


襖の向こう側から聞こえてくる君の声は僕の知らない
甘い熱を帯びたものだった。規則的に続く君のか細い吐息に
混じって時折響く艶やかな声に僕は思わず目を伏せてしまう。


君の中に生まれたもの。
君が強くなりたいと願った意味。

その全てが僕の中で1つに繋がったとき、
僕は自分の心に濃い痣のようなものが出来た事を思い知った。


20170921
堀川国広×不動行光 / 審神者×不動行光

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