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「仮初」 no.1【走馬燈】

刀剣乱舞・二次創作SS「仮初」
no.1【走馬燈】

●方向性:審神者×刀剣男子
●物語:夢要素有、ややダーク
●登場人物:審神者,不動行光


-嘘を重ねて織りなす救いの真似事になればいい。


炎に包まれる夜、俺は愛しさと永遠の別れを知った。

自分の居場所がいずれ消える事は何となく分かっていた。
だけど、すべてが跡形もなく消えるという事がこんなに
恐ろしい事であるのを知ったのは本当にすべてが焼け落ちて、
俺の意識が完全に消えた後の事だった。


「ああ…」


泣く事も許されないままに燃えていく。

大切な人が目の前で消えていく。

名を呼ぶことすら許されない。

愛していると伝える事すら出来ない。

守れない自分を、許してほしい。


「ああ…」


何も叶わない。
それなら、
もう何もできないまま
無様にこのまま
消えていきたい。


「ごめん…」







「何が?」


ふと聞こえてきた声はとても暖かかった。
ぼんやりとした薄暗い部屋の中、俺の頬を撫でる貴方は優しい目で
俺を見下ろしている。気付けば外はもう真っ暗になっていて、
自分が随分と長い間、眠ってしまっていたことに気付く。

「もう…夜?」
「うん、夜更けだよ」

貴方の膝の上に顔を埋めて、その心地よい体温にずっと甘えていたくなる。
だけどそう言ってばかりはいられないと自分の意識を掴みあげ、身を捩った。
けれどそれを制するように貴方の手が俺の頬に手を寄せる。

「まだそばにいていいんだよ」

優しさの声の端に、少しだけ寂しそうな思いを響かせる。
貴方はこうして時間を先送りにするのが好きだ。


「主…俺、寝てた…?」
「うん、よく寝てたよ。でも…」


貴方の温かな指先が俺の瞼をそっとなぞる。
ふと目を細めれば、目頭からすっと一滴、涙が伝った。
鼻先を勢いよく流れ落ちる涙は貴方の膝の上へと迷いなく下っていく。


「泣いてたよ」


安堵するような溜息の後に、慰めのように降ってくる貴方の唇を受け止める。
唇が重なる前に、貴方の唇が何かを呟くように小さく動いたように思えたけれど、
貴方はそれをごまかすように、何度も俺の唇を啄むように口づけを繰り返す。
思いをはぐらかされるのがつらい…けれど、その行為が今はとても心地よかった。
どうしてこんなにも、思いと行動は悲しいほどに逆行していくのだろう…。


「ゆきくん、好きだよ」


首筋に貴方の甘い吐息が寄り添う。
思わず体が震えたのを隠そうとして、天井へ視線を向けても、
貴方の唇の感覚が一向に離れていかないことに戸惑ってしまう。


「主、もう大丈夫だから…」


そう言ったところで辞めてくれないことはわかっているけど、
言わずにはいられない。後ろめたい気持ちと満たされたい本能が
葛藤して戸惑いばかりが意識を支配していく。


「私はあの人の代わりにはなれないだろうけどね」

「何言ってるんだよ…もう昔の事は忘れちゃったよ」


嘘を重ねて織りなす救いの真似事になればいい。
俺は貴方の想いに応えたいがためだけに、誘われた手を
握り返すことしか出来なかった。


本当に救われたいのは…誰なのだろう。



20170919
審神者×不動行光

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